PROJECT
STORY
業界先駆のビジネススキームを駆使し
大手メーカーの環境対策に貢献
ーオンサイトPPAを活用した顧客開拓プロジェクトー
PROJECT DETAIL
太陽光などの再生可能エネルギーによる発電普及を目的とし、日本では2012年にFIT制度(Feed-in Tariff=再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が固定価格で買い取ることを国が約束する制度)が制定された。同制度を利用した売電事業の活性化によって太陽光発電は急速に広がっていったが、近年は、その太陽光発電の普及に伴い設備価格も低下したことで、電力の買い取り価格が徐々に下落。代わって、自家消費ニーズが高まりを見せる中、TESSグループはそうした市場動向に的確かつ迅速に対応するため、業界で先駆的なオンサイトPPA(Power Purchase Agreement=電力販売契約)ムに着目。西日本営業チームに所属する精鋭2人が大手食品メーカー井村屋様をお客さまに自社初のオンサイトPPAプロジェクトを立ち上げ、新機軸の太陽光発電ビジネスに挑んでいった。
MEMBER
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MEMBER.01 TADASHI ISHII
石井 是
営業本部
西日本営業チーム 課長
2011年入社/社会学部 社会学科 卒 -
MEMBER.02 RYOSUKE ANZAI
安在 良将
営業本部
西日本営業チーム 主任
2016年中途入社/理工学部
環境システム工学科 卒
※所属は取材当時のものです。
CHAPTER 01
新規受注獲得の提案として
浮かんだオンサイトPPA
菓子やチルド食品などでよく知られる、食品メーカー井村屋様。三重県津市に本社工場を置く同社は、省エネや環境対策への取り組みを積極的に進めている。TESSグループとの関係が始まったのは、同社がコージェネレーションシステム導入を図った2017年。ニーズを聞きつけた西日本営業チームの石井と安在がタッグを組み、コンペに臨んだ。残念ながら受注は逃したものの、その後もさまざまな省エネの情報提供やソリューション提案を続けた。そうして2年近くが経過した2019年、安在はお客さまから環境対策強化に向けた太陽光発電導入の要望をいち早く聞き出すことに成功。しかし、この時安在の脳裏に浮かんだのは、従来型のFIT制度や単純な自家消費をベースにした提案では、もはや競合との差別化やコストの問題でお客さまに採択していただくのが困難なことだった。安在は社内全体に相談をかけ、何かよい方法はないかどうかを探った。そこで提案手法として挙がったのが、当時環境関連市場で注目を集め始めたオンサイトPPA方式を用いたビジネススキームだ。すなわち、お客さま工場に設置する太陽光発電設備をTESSグループが所有し、生み出される電気をお客さまに利用いただく手法である。お客さまは設備にかかる初期投資の負担や設備の維持管理をTESSグループに任せ、発電された電気の費用を負担するだけでよい。そのため、省エネと脱炭素効果を効率的に得ることができる。また、TESSグループは長期的な売電収入とお客さまとの取引関係が見込める。安在と石井は、初の試みとなるオンサイトPPAプロジェクトに向かって走り始めた。
CHAPTER 02
前例なきゆえに
労苦を要した契約書作成
TESSグループはこれまで培ってきた環境ビジネスへの取り組みにより、エネルギー分野に関する補助金制度活用についての豊富なノウハウを有している。安在と石井は環境省によって新たに制定されたオンサイトPPAに関する補助金制度を調べ上げ、活用を提案に盛り込んだ。結果、2人が精力を注ぎまとめ上げた提案書は、競合を押しのけてお客さまの支持を獲得。見事に受注を成し遂げた。
「オンサイトPPAが世の中に浸透する前に確固たる提案を行えたことで、この分野のトップリーダーとしてお客さまに評価されました。補助金を有効活用したコスト的な競争力も契約を勝ち取った大きな要因だったと思います」と安在。
しかし、受注決定で安堵したのも束の間。業界および自社内でも前例のなかったスキームゆえに、プロジェクトが具体的に動き出すやいなや主担当の安在に難題が押し寄せた。
「初期段階で最も困難を感じたのが契約条件の取りまとめです。電力価格設定、契約期間、利用に関する責任分担など、詳細な取り決めを契約書に落とし込む必要がありました。売電制度や設備の耐久性を勘案して契約期間を20年という長期に設定してご提案したのですが、それほど長い契約となるとお客さまも当社も慎重になります。お客さまの要望を汲みつつ、当社グループの法務チームと何度も擦り合わせを行って、一心不乱に内容調整を重ねました。最終的な契約書ができ上がるまでに半年間くらいはかかったと思いますね」と安在が苦心の模様を話す。
CHAPTER 03
営業主体で設備設置まで
差配する特別案件
契約書が完成した後は、いよいよお客さまの工場に太陽光発電設備を設置する段階に。TESSグループは優秀なエンジニアリングチームを抱えており、発電設備の設置から稼働までを営業から引き継ぐのがこれまでの進め方だった。だが、今回のように電力販売をビジネス主体にする場合は法的立場上、設備工事をTESSグループのエンジニアリングチームでは請け負うことができない。そのため、安在はTESSグループとお客さまとの間に設備工事の元請け会社を立て、設計施工を委ねなければならなかった。契約書同様、未経験の試練に直面した当時を振り返り、安在はオンサイトPPAならではの仕事について次のように語った。
「自社で工事の元請けができないので、営業担当が設備所有者の立場で関連するあらゆる事柄について段取りをすることになりました。技術面は協力会社様に任せるとはいえ、お客さまの要望事項は営業から指示をしないといけません。普段と異なる技術ジャンルに踏み込んでいく業務には、慣れない部分もありました。当然、自分一人では完璧にできないため、要所要所でエンジニアリングチームの知恵を借りながら仕上げていった感じです」。
こうして2021年春、TESSグループにとって初めてのオンサイトPPAによるサービスがスタートした。同社に通い始めて約4年、安在は時流をとらえた最新の環境ビジネスで大手顧客との大仕事をものにしたのである。この実績を土台にすれば、さらに多くのお客さまへオンサイトPPAを広げていけるはずだ。自社の発展と社会全体への環境貢献を目指し、安在の営業意欲は増すばかりである。
再生可能エネルギー利用の新たな道を開いた今回のオンサイトPPAプロジェクトは、お客さま先の地元新聞にも掲載されるほど社会的に大きな話題となった。TESSグループは同プロジェクトを通じてオンサイトPPAスキームの基本方針とノウハウを確立。自社事業の一層の進展を図る良策として、全国への水平展開に力を注いでいる。2021年11月現在、安在と石井はすでに複数のお客さまからの引き合いを受け、西へ東へと営業活動に飛び回っている。