サステナビリティ

Sustainability

第1回ステークホルダー・ダイアログ(2023年6月)

【概 要】

第1回目となる2023年6月に実施したダイアログでは、外部有識者3名をお招きし、主にTESSグループの事業活動やマテリアリティ、気候変動対策や女性活躍をはじめとする人材の多様化等のESGに関する取り組みに対して、ご意見を頂戴いたしました。公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(以下、WWFジャパン)の山岸氏には、気候変動と生物多様性をテーマとした基調講演も実施いただきました。また、ヴェオリア・ジャパン株式会社の野田氏と、三井不動産株式会社の浜本氏からは、それぞれの会社におけるESGに関する考えや具体的な取り組み等についてもご紹介をいただきました。

【出席者】

【外部有識者】

  • 公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
    自然保護室長
    山岸 尚之 氏
  • ヴェオリア・ジャパン株式会社
    代表取締役会長
    野田 由美子 氏
  • 三井不動産株式会社
    取締役
    浜本 渉 氏

【テスホールディングス株式会社】

  • ●取締役会長取締役会議長 石脇 秀夫
  • ●代表取締役社長 山本 一樹
  • ●専務取締役 髙崎 敏宏(テス・エンジニアリング 代表取締役社長兼務)
  • ●取締役ESG・女性活躍推進担当 吉田 麻友美(ESG推進委員会 委員長)
  • ●テス・エンジニアリング 取締役ESG推進担当 渡 務*(ESG推進委員会 副委員長)
  • ●取締役監査等委員 藤井 克重*
  • ●社外取締役監査等委員 大倉 博之*
  • ●社外取締役監査等委員 井上 正基*
  • ●社外取締役監査等委員 濱本 晃郎
  • ●ESG推進委員会 事務局 牧野 健吾
  • ●ESG推進委員会 CC(クライメイトチェンジ)WG 水田 雛乃
  • ●ESG推進委員会 D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)WG 松本 大樹*、川島 愛那
  • ●オブザーバー参加 松本 善大*、中村 祥子*、浅田 愛梨
  • * オンライン参加

【外部有識者の方との意見交換】

気候変動対策に関する取り組みについて

テスホールディングス(以下、THD): TESSグループでは、2022年6月期からScope1、2のGHG排出量の集計とCDPへの報告を開始し、TCFD提言に基づく情報開示を行いました。2023年6月期からはScope3のGHG排出量の集計も開始しています。
お客さまの脱炭素を支援することを主要ビジネスとしているTESSグループとして、今後、GHG排出量の削減及び情報開示について、どのような点に重視して行っていくべきでしょうか?

WWFジャパン 山岸氏: 科学的に見た時に世界で望ましいと言われているGHG排出量の削減水準とTESSグループが現実的に対応可能なラインとの間にどれだけの差があるか見定めつつ、なるべく高いラインに持っていけるかどうかを検討すべきかと思います。
例えば、SBT認定のためには年率4.2%以上の排出削減をできているか等が条件になってきます。まずはこの点を達成できるかを確認してみるのが良いのではないかと考えます。
Scope3のGHG排出量に関しては、きちんと集計すべきですが、コストとの見合いになる部分もあると思います。他社で上手く集計ができている事例で言うと、例えば、初期の頃から取引先や調達先に対してGHG排出等に関するアンケート調査等を地道に実施し、その中でコミュニケーションを取っていくことで、徐々に具体的な対策の依頼に繋げられているような事例があります。Scope3の集計に関しては、取引先や調達先に対して慣れていただくことも重要なので、地道な取り組みの積み重ねが大事になってくると思います。

生物多様性に関する取り組みについて

THD: TESSグループは、国内では太陽光発電所やバイオマス発電所の開発や運営を行っていたり、海外ではインドネシアにおいてPKS(※1)の輸出事業や、EFB(※2)ペレットの研究開発等を実施しています。このような中で、生物多様性への取り組みについては、どのような分野でどの程度取り組むことが社会から期待されるのでしょうか?

WWFジャパン 山岸氏: 国内の発電所等の開発で気を付けなければならないことは、開発地域の生物多様性の希少性等の情報をなるべく集めておく必要があることです。国内で何かしらの問題が起きているほとんどのケースは、地域と無関係に開発を行っている場合です。まずは、生物多様性に関する情報を集めることが必要です。
2022年に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」の目標の中でも分かりやすいものとして、2030年までに陸域と海域の30%以上を保全する「30 by 30」という目標があります。今後、国立公園として指定される場所や、自然共生サイトのような民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域の中に組み入れられる土地も増えてくるのではないかと考えています。このような地域の近辺の生物多様性を侵害していないか等については、特に気を付けた方が良いと思います。
PKSやEFBに関しては、GHGプロトコルを改めてご確認いただくのが良いと考えます。PKSやEFBの使用がGHG排出量削減に繋がっていると言うのであれば、PKSやEFBを獲っている場所や、元々発生した場所のカーボンがどのように変化しているかについて、証明を求められるような可能性が今後出てくるため、ルールとの整合性は見ておくべきと思います。

(※1)PKS(Palm Kernel Shell): パーム椰子の種からパーム油を搾油した後に残った椰子殻のこと。
(※2)EFB(Empty Fruit Bunch): アブラヤシからパーム油を搾油する際の副産物(残渣)である椰子空果房のこと。

サプライチェーンにおける人権課題に対する取り組みについて

THD: インドネシアにおけるEFBを有効活用するようなサーキュラーエコノミーに関連するビジネスを展開する上で、サプライチェーンにおける人権課題や人権デューデリジェンス等について、どの程度取り組んでいくべきでしょうか?

ヴェオリア・ジャパン 野田氏: 当社グループでは人権問題を重視しており、例えば調達にあたっては、新規調達先の世界人権宣言や労働法令、環境法令等の遵守状況を確認しています。コスト面のみで判断するのではなく、人権や環境といった観点から当社グループが求める基準に合うかどうかを判断しています。
当社グループでも、バイオマス発電所5件の運営を行っており、その内4件は地域で廃棄されてしまうような資源を燃料として活用しています。人権と環境の両面を考慮しながらバイオマスに関する取り組みを行っています。
御社でも、人権に関して、取引先や調達先と地道なコミュニケーションを行い、御社の方針に理解を示してくれるような会社と取引を行う等の取り組みも必要ではないでしょうか。

女性活躍推進に関する取り組みについて

THD: 今後は、現状、女性基幹総合職が多い管理本部だけでなく、エンジニアリングやメンテナンス部門といった技術職においても適性のある女性基幹総合職を少しずつ増やしていく必要があると考えています。特に技術職においては、女性基幹総合職の登用を進めるにあたって、男性技術職と同等の能力があるのか、同じ時間働けるのか等、どうしても厳しめに選考されるような傾向があるように感じます。適性と意欲がある女性であれば、今後の伸びしろに期待し機会を与え登用してみる、という選択もできるかと思いますが、この場合、今度は「男女平等であるべき、逆差別なのではないか」という意見が出てくるのではないかとも考えています。このような中で、TESSグループ全体において女性基幹総合職を増やしていくためには、どのように進めていくことが必要でしょうか?

ヴェオリア・ジャパン 野田氏: まずは、女性を一定数確保することが重要だと考えます。マイノリティのままだと、女性も居心地が悪く、男性もどのように接して良いか分からず、悪循環が断ち切れません。マイノリティの比率が3割程度になると、それが当たり前になります。したがって、一定数に達するまでは、女性を率先して登用することも重要だと感じます。当社グループでも、2017年に女性管理職比率は4%程度でしたが、昨年には11%程度となりました。登用にあたって、できる限り女性の候補者を優先させる努力をしてきた結果でもあると思います。トップが強力なリーダーシップを発揮することが重要です。加えて、トップのメッセージを各階層のリーダーに浸透させることも大切です。
また、例えば、現場で働く女性の不安や悩み(トイレや着替える場所が無い等)を吸い上げるために、ツバキという女性のネットワークを作りました。女性が意見を言いやすい場を作ると同時に、社外の女性ネットワークとも意見交換する等して、女性の活躍をサポートしています。

三井不動産 浜本氏: 与えられた機会やチャレンジに対して、男性は「できます」と自己評価も高く、掴みに行こうとする傾向がある一方で、女性は「まだそこまでの能力や自信がありません」と自己評価が低く、尻込みする傾向があるように感じます。そういった特性も踏まえた上での対応も必要ではないかと思います。

ヴェオリア・ジャパン 野田氏: 確かに、女性管理職のロールモデルが少ないこともあり、「管理職になると大変そう」と昇進をためらう女性もいます。しかし、実際に任せれば期待に応えてくれることも少なくありません。まずは「やらせてみる」ことも必要ではないでしょうか。

「なでしこ銘柄」等の選定にあたっての課題等について

THD: 浜本様へのご質問です。御社は2年連続で「なでしこ銘柄」に、4年連続で「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」に選定されています。ここに至るまで、どのような課題があり、その中で最も課題だと感じられたものは何だったのでしょうか?

三井不動産 浜本氏: まず、女性活躍推進にはトップのリーダーシップが非常に重要であると感じています。トップ主導で積極的に進めていかないと、同質性の高いグループにいることは阿吽の呼吸で物事を進められ居心地も良いため、すぐに組織は元の状態に戻ってしまいます。
また、多様性の効果というものは確実にあって、当社でも男性だけでは決して思いつかなかったようなサービスやお客さま向けの配慮等が女性社員からの提案で開始され、好評を得ているという事例が少なくありません。
「なでしこ銘柄」に取り組むにあたっては、むしろ女性の方から「なぜ女性だけが優先されるのか?男女を分けて言わないで欲しい」等の意見が出てきました。男性からも似たような意見が出てきたりと、双方の意見をどう調整するのかが1番大変だったのではないかと思います。これまでの取り組みの中で感じてきたのは、特に女性は個々よりも集まった時の方がより何倍もの力を発揮するということです。そのため、このような環境をどのように作っていくのか、また、ロールモデルを見せたり、他社事例を社内で展開していく等、できることを徹底的にトップが主導して取り組んでいけるかが重要であると考えます。

TESSグループのマテリアリティ(重要課題)について

THD: TESSグループが特定したマテリアリティについて、抜けていると思われる事項や、重要度の評価について、率直なご意見やご指摘をいただけないでしょうか?

ヴェオリア・ジャパン 野田氏: 生物多様性に関する項目があっても良いのではないかと思います。

WWFジャパン 山岸氏: バイオマスに関する事項はマテリアリティになる可能性はあると思います。また、既に「コンプライアンスに則った発電所開発」をマテリアリティとして特定されていると思いますが、特に海外では、政府が認めている合法的なものだからと言って持続可能とは限らないというような事例もありますので、ご留意いただく必要はあると思います。

三井不動産 浜本氏: 現状のマテリアリティは網羅的に記載されていて、各項目によって粒度の濃淡もあるべきと感じます。「多様性の推進」と一括りになっていますが、何の多様性を推進していくのか等を具体的にしていく必要もあるのではないでしょうか。このマテリアリティをもって、どのように外部のステークホルダーや社員に対して伝えていくのか、この辺りに難しさがあるのではないかと感じました。

TESSグループへの期待について

THD: 浜本様へのご質問です。御社のようなTESSグループのお客さまになっていただけるような立場からご覧になられて、TESSグループのように脱炭素向けソリューションの提案等を行っている会社に対して期待されることは何でしょうか?

三井不動産 浜本氏: 脱炭素に向けた取り組みについては、自分たち自身も走りながら考えています。そのため、常に何ができるかを一緒に考えながら、継続的に取り組んでいけるような関係性を築けることが必要だと感じています。